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答えは、ひとつじゃない。

ゴールデンウィーク活動報告2:若草物語

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THEミュージカル嫌いの俺が、谷賢一演出のミュージカルを観る。








当然のことながら、原作がどんな内容なのか知りません。
当然のことながら、ブロードウェイで上演されたことなんて知りません。
勝手な想像としては、昼ドラ的な恋愛ものなのかなー、と。


んで、見終わった後の感想としては
・眠らず観られた。
・物語そのものは悪くないじゃん。
・外国語劇の日本語化はやはり不可能なのだろうか。
という3点が主なポイント。

個人的総評としては、☆☆☆といったところだろうか。


まず、演出・谷賢一が事前に話していた見所は以下の通り。
(本人のブログPLAYNOTEより引用)

見どころ1:歌がいい
ミュージカル通を唸らせるほど妙に曲がよく、かつ演者も音大出や歌手など実力派揃いなので、ミュージカルの醍醐味・歌に関しては自信があります。

見どころ2:ダブルキャスト演出
マーチ家の四人姉妹を総入れ替えでダブルキャスト・ダブル演出。「はちみつ組」「ダージリン組」の二つ。ちょっとお得なリピーター割引もご用意していますので、お時間のある方はぜひ両バージョンご覧下さい!
・はちみつ組…ミュージカルらしさ全開、派手で元気で勢いのある演出
・ダージリン組…ちょっと大人に落ち着いた、しっとり観れるミュージカル

見どころ3:ミュージカルくさくない演技
「突然歌う」と並んでミュージカルを敬遠してしまう、あの大袈裟でベタベタな演技を、今回片っ端から殺ぎ落としています。「役としてしっかりそこに存在すること」に重きを置きつつ、歌への飛躍が突飛にならぬよう様々工夫しております。是非ご覧になって審判を下して下さい。


見どころ1についてはノーコメント。
何てったって、俺には比較する対象がない。
確かに歌は上手かったが、それがミュージカルとしてどのくらいのレベルなのかはよく分からない。
ノーコメントとか言っておきながらもう少し書かせてもらうけど、俺が観たダージリン組では役者の声量に若干のアンバランスがあったように思う。
すごく声の張れる人と、やや声の細い人がいた。
それがミュージカルとしてどうなのかってことについてはコメントができない。
やっぱ比較するものがないので。
本来であればもうちょっと均整のとれた声量である方がハーモニーとして良いんじゃないかなーって思ったのです。


見どころ2についても申し訳ないがノーコメントだなー。
はちみつ組も観に行ってしまおうかと言うほどミュージカル狂ではない。
ダージリン組4姉妹の仲では、ヤマトタケルみたいな髪型をしていたベス役の娘がナイスプレイをしていたなー。
メインの4姉妹がダブルキャストで、脇役陣が共通キャストってのは珍しい方なのかもしれないが、脇役陣はみんな一定の戦闘能力を持った役者だったと思う。
特にママ、すげー。歌も良かったが、役者としても本当に輝いていた。


見どころ3について。これはコメントできそうだ。
谷賢一の言うとおり、俺がミュージカルの嫌いな理由筆頭に挙げられるのは『突然歌い出す』ということ。
そして『ミュージカルくさい演技』というのもたしかに嫌い。
『役としてしっかりそこに存在すること』というのはDULL-COLORED POPの思想に近いように思うが、それは実践できていたように思います。
序盤は、まぁしょうがないけど、劇中で歌を歌うことがすっげー不自然に感じられた。
でも、普通の演技から歌の演技へとクロスフェードする箇所については、それが突飛にならないように(クロスカットにならないように)、自然に丁寧にクロスフェードさせていたように思いました。
だから中盤以降は歌のシーンもあまり違和感なく観ることができたっていうのは良かったことだと思います。

感想の1番目にも書いたけど、俺がミュージカルを眠らずに観られたっていうことは結構画期的なことだったりする。
長くてダラダラとしていて、ワケ分からない歌を歌われて迷惑散漫、飽きて寝る。
というのがいつものパターンだったんだけれど、今回の若草物語では全く眠らずに(眠気さえ感じずに)観ることができた。
それはきっと体調が良かったということもあるだろうし、物語そのものが面白かったということもあるだろうし、歌へのクロスフェードが気持ち悪くなかったというのも一因だと思う。

そうそう、物語そのものは面白かったと思うよ。
ついつい俺が期待してしまう意外性やひねりなんかは殆どないんだけど、多くの人が好きになりそうな素敵なやさしい物語だった。
4人姉妹を中心に、衝突と結合を繰り返しながら、最後はみんなでハッピーエンド。
おぉーーー、なんとアメリカンな話だ。ハリウッド映画みたいだ。
昨今の俺としては、最終的に誰も傷つかない、というのが好きだ。
ベスの死という哀しい出来事はあるけれど、それは疫病による死で誰の仕業でもない。
怒りや憎しみによって誰かが誰かを殺してしまうような話は、できれば観たくない。
はじめは個人対個人の問題かもしれないが、それが巡り巡って戦争のような惨劇に繋がってしまう訳だから。

なんかいろいろ転々としてしまったけれど、物語そのものとして、起伏というか、起承転結というか、その構成は良かったと思います。



さて、感想の3点目に挙げた日本語について書き記しておきたいと思います。

これ、つまりどういう事かというと、結局、外国語で書かれた原本を頑張って日本語訳しても、外国語っぽい日本語にしか聞こえないんだなー、ということです。
普通の演技から歌へのクロスフェードについては、自然で丁寧で良かった。
でも、普通の演技、っていうか普通の会話がなんか気持ち悪い。
日本語の会話としてなんか気持ち悪い、と感じたのです。
もっと日本語っぽく訳すこと出来ないのかなー、と感じたのです。

これについては賛否両論なのかもしれない。
たとえば、原文や訳しまくってくだけた日本語にしてしまうと、原文の良さが失われてしまう、という考えの人もきっといると思う。
原文には原文の韻律があるはずで、そのリズムを崩すことになるからね。

でも俺としては、原文を全く知らないっていうのもあるけど、もっと自然な日本語で芝居をしてほしかったなー。
そういう意味では『ミュージカルっぽい芝居』をしていたように思う。


そんなこと思うにはタイムリーすぎる出来事があった訳です。
今年の年明けに放映されてたんだけど『人志松本の許せない話』というのがあったんです。
『すべらない話』じゃなくて『許せない話』ね。
この中で松本が『天ぷら』という話をしていたのです。
どんな話かというと、外国人が天ぷらを発音しようとすると『テンプーラ』と、なぜか『ぷ』を強く発音して、なぜか『ぷー』と伸ばす。
でもそれって、そもそも日本人が天ぷらのことを外国人に説明するとき『テンプーラ』と言っているのがいけない訳で、はじめから『天ぷら』と発音していれば、外国人も『天ぷら』と発音するはずである、ということ。
日本人が『テンプーラ』って発音するもんだから、外国人は『テンプーラ』と発音するのが正しいと勘違いしている。
日本人が『テンプーラ』という発音を直さない限りこの問題は解決されない、という怒りの提言。

この話に、妙に納得してしまったんだよねー。
若草物語に話を戻すと、劇中の会話が全て『テンプーラ』のように思えたのです。
なんか不自然な日本語で、『天ぷらって言えよ』と思っていました。

と、言うことは、英語劇をスペイン語で上演するときには、スペイン人は『英語っぽいスペイン語で気持ち悪いなー』と思うのかな?という発展的疑問も沸き起こりました。


あ、あとあと、お馬鹿なシーンに対する反応の良さが驚愕だった。
騒動舎出身の谷賢一らしく、安い小道具を使ったお馬鹿なシーンを作っていたけれど、これに観客大爆笑。
ビックリした。いわゆる一つのギャップ理論ですか?
面白くなかったワケじゃなくて、爆笑するほどのものでもなかったから、普通に観ていたんだけど、周りの客が爆笑しているのが驚きだった。
観劇をする人間として、ジャンルというか人種というか、全然違うんだな、ここの人たちって思いました。



昨年、エムキチビート君がちょい役で出演していた『ハロルドとモード』という作品を観た。
『日本最高峰のミュージカルだっ』と宣伝されたので。
いろいろ芝居を観てきて、そろそろミュージカルを観られるかなーって思って。
で、寝た。ガン寝した。気持ち悪かった。
やっぱ俺にはミュージカル無理だなって観念したけど、今回は眠らずに観られた。
それってやっぱり画期的だ。
もしそれが『谷賢一演出によるものだから』という理由であったとすれば凄い。


今日は吉田ミサイルの7時間一人芝居を観戦します。
きっとこっちの方が若草物語より感動しちゃうかもしれない。
(同じ土俵に上げちゃいけないかもしれないけど)


谷くん、お疲れさま。今度対談しよう。



谷賢一と演劇世界、これ無尽蔵。
by mujinzo | 2008-05-03 12:31

by mujinzo